アーティスト・ステートメント
僕はウルグアイのノスタルジックな首都モンテビデオで生まれ、都会暮 らしが長いが、子供のころの数年間はウルグアイの田舎で育った。昔は豊かな「南米のスイス」として知られていたこの国に渡った、スペイン人とイタリア人の移民の子孫だ。そして、いつ果てるともしれない経済的、社会的、政治的危機の中で大人になった。こういう経験が自分の性格と環境適応能力を作っていったように思う。
ウルグアイ、アルゼンチン、スペインに暮らし、今は日本に住んでいる。 多文化的な生い立ちと、実際様々な国に住んできたという現実から、僕は、物ごとをより複雑な視点で眺めるという独特の能力を持つようになった。そして、今は主に日本社会の習慣、考え、構造を「外側から内側へ」観察している。
ラテンアメリカにルーツを持つことは、僕の強味だ。芸術としてのシュ-ルレアリズムとラテン文学的なマジックリアリズムのレンズを通して、社会の様々な側面と性格を読み解くことができる。写真は自分のルーツを探す助けとなる道具であり、写真を撮ることによって、自分自身の複雑さと同時に、自分がラテンと日本が混在した魅力的な状態にいることを目撃する。思い出、家、故郷にちなんだ「批判的」で、でも情緒的なイメージは、僕に独特のものだと思う。
写真を撮ることによって、僕は魅惑的な日本社会とその洗練された文化に対して、自分自身を再定義している。「移住」してきたラテンアメリカ人の僕は、ラテンと日本という、全く異なる、でも実は多くの点で補完しあえ、非常に人間くさいところが似ている、そんな二つの世界の掛け合わせを映像にしている。
写真を撮ることで、僕はやっと「世界にいる」ことができ、住んでいる場所に「根を下ろす」ことができる気がする。
ダニエル・マチャド
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